2012年05月25日

想定外と工学(技術者倫理)

平成24年5月2日付の日刊工業新聞に掲載された
当会会員の 津田 文男 さんの原稿を
HP用に編集していただいたものをご紹介いたします。

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タイトル:想定外と工学
氏名:津田 文男  環境カウンセラー(事業者部門)

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発生を容認?

東電福島第一原発事故以降「想定外」という言葉が、
よく使われている。
この場合の「想定外」は、
事故発生の容認を言外に匂わしているように思う。

しかし「想定外」とは

(1)世界最高の科学技術を以ってしても想定できなかった。
(2)確率的に発生の可能性が低く想定から外した。 
(3)膨大な対策コスト等、経済性を考慮した想定外。

の三種類が主要なものとして考えられる。

地震・津波等の自然現象は不確実に発生する。
従って、自然現象の予想は容易ではなく
人間の知恵を超える自然界の深さがある。

我々は知り得た情報をもとに科学・技術(工学)の知恵で
不都合な事象を避けるように取組んできた。
ここで科学・技術(工学)の知恵とは何かを考えてみると、
その答えの一つは安全率であると思う。

不都合な状態の発生を回避するための設計手法は、
可能な限り裕度を得る適切な安全率を採用することであるといえる。

認可や法では無理

この安全に対する裕度となりうる安全率の決定こそが
故障や事故を回避する重要な要素であり
「想定外リスク」に対し考慮している点である。
また安全率は、適切な技術者(工学)倫理に基づき
決定されるべきものである。

これらのことから
不確実で予測が容易でない自然現象(地震・津波等)に対しては、
国の認可や法律、安全基準だけでは
「想定外リスク」の発生を防ぐことはできないということを示唆している。

女川原発が好例

適切な技術者(工学)倫理に基づく安全率により
想定外リスク(地震・津波等)の脅威から守り、
かつ社会的使命を果たした女川原子力発電所は良好な事例である。

女川原発は福島第一原発と、ほぼ同じ規模の
高さ約13mの津波が押し寄せたが、敷地高さは14.8mであり、
原子炉系の停止・冷却・閉じ込め機能は健全に機能し、
冷温停止状態にすることができた。

敷地高さの決定経緯において、
昭和43年には学識経験者も参加した東北電力の社内委員会で
貞観津波(869年)、慶長津波(1605年)も含めて記録に残る津波を考慮し、
安全率を見込み敷地高さを14.8mに決定したとのことである。

これこそ、巨大な科学・技術(原子力発電所等)を
社会において価値あるものにするため、
技術者が適切な技術者(工学)倫理に基づき確保した安全率により
社会的使命を果たした一つの事例であるといえる。

技術士として安心・安全な社会を構築するため、
「想定外」という言葉の真に意味するところを的確に理解し
適切な技術者(工学)倫理を拠りどころとして
社会的使命を果たしていきたいと考えている。

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posted by ech28-3 at 20:09| 日記